Nicolas Hulot ニコラ•ユロ
2011年4月の記事から
仏の環境保全党書記長ニコラ・ユロ
環境保護運動に携わり、国民の間で大きな人気を誇るニコラ・ユロ(Nicolas Hulot)。彼が先日(4月13日)、来年の大統領選挙への出馬宣言を行いました。2007年の大統領選でも出馬を期待されていただけに、満を持しての出馬と言えます。
ニコラ・ユロ。1955年4月30日、リール生まれ。30日で56歳です(因みに、私と同年生まれ)。さまざまな職業を経て、カメラマンに。世界各地の風土をフレームに収めていましたが、ラジオ番組出演が契機となり、1987年、世界の環境問題にスポットを当てるテレビのドキュメンタリー番組“Ushuaïa”(TF1の番組、タイトルは南米大陸南端の町の名)のプロデューサー兼レポーターとなり、一躍人気者となりました。番組は1995年6月まで続き、いったん中断の後、1998年10月からは“Ushuaïa Nature”というタイトルで放送を再開しています。
また、パリ市長時代のジャック・シラク(Jacques Chirac :後の大統領)と会い、意気投合。その頃から環境をテーマに、政治に近づいたようです。
そのニコラ・ユロが、ストラスブールで行われた反原発デモに参加しました。福島原発の事故を契機に広がる反原発の動きですが、大統領選への出馬宣言直後だけに、メディアも大きく取り上げています。25日の『ル・モンド』(電子版)です。
エコロジストの大統領選候補、ニコラ・ユロにとって脱原発は達成すべき命題だ。「福島原発の事故によって、原子力が将来のエネルギー問題を解決する答えではありえないことを完全に認識した」と、ストラスブールで行われたフェッセンハイム原発(la Centrale de Fessenheim:1977年に稼働開始、フランスで稼働中の原発としては最古のもの)の停止を求めるデモを前にこう語っている。
「脱原発は最優先の課題であり、価値観を変えることだ。私自身、原発推進派の科学者たちが述べる意見に賛同する一員であったが、彼らの意見は、福島原発の事故という現実を前に、信頼を失っている。私は教条主義者ではなく、一歩ずつ歩みを進めるタイプの人間だ。しかし、福島原発で起きている現実を前に愕然とし、政治家や科学者たちの狼狽ぶりに、本当の恐怖を感じている」と、こうも続けている。
ニコラ・ユロは、大統領選へ向けてのエコロジー派のライバルであるエヴァ・ジョリー(Eva Joly:ヨーロッパ・エコロジー所属の欧州議会議員)に、大統領選出馬表明の演説で原子力問題に触れなかったことを批判されたが、エコロジー陣営を喜ばすような態度を取ることは敢えて差し控えた。「エコロジスト支持者たちが聞きたいと思っていることに合わせて自分の信念を過激にしようとは思わない。そんなことはせずとも、人類が過ちを犯したことは現実が仮借なきまでに示しているのだから」と、述べている。
ニコラ・ユロによれば、急がず、プラグマティズム(実用主義)に徹すれば、脱原発は今後数十年で達成できるだろうということだ。「そのためには、いくつかのエネルギーを上手に組み合わせ、再生可能エネルギーの研究開発へ投資を誘導し、効率的なエネルギー利用を達成する必要がある」とも語っている。
2007年の記事から、
ニコラ・ユロは1955年リール市で生まれる。父親はベネズエラまで金探しに出かけた冒険家だったが、ユロが15歳の時に病死。大学を中退したユロは、南仏の海岸で、清掃係、ウェイター、ヨットの講師などの職に就き、休日にはホンダの450ccを乗り回す。その後通信社Sipaに入社し、カメラマンとしてグアテマラ、ローデシア(現ジンバブエ)、南アフリカなどに派遣される。ラジオ出演をきっかけにマスコミに認められ、1987年から “Ushuaia” を担当することになる。その翌年には、当時パリ市長だったシラク現大統領と出会って意気投合。何度か環境相のポストをすすめられたりもするが、マスコミで思ったままをいい続けたい、と断っている。
そのユロが大統領選を今春に控えた政界を揺るがしている。というのも、マスコミを通じてフランス人一般に広まっている環境保護の立て役者というイメージを盾に、各党の大統領選候補者に、「持続可能な開発を担当する副首相を任命する/炭素ガス発生を1/4にするための税を設ける/農業の補助金を考え直す」などをうたった環境保護協定に署名することを迫っているからだ。満足がいくように署名が集まらない場合は自ら立候補すると表明している。その場合ユロは10%得票という結果が世論調査で出ているので、緑の党を初め各党は戦々恐々。ロワイヤル、サルコジ両候補も署名することを確約している。「信号はすべて赤! 経済にとってよいものは環境にはよくない。市場至上主義は機能しない。地球は限界にきている。開発途上国の需要に応えるためには地球が四つは必要だ」



